小松 嘉門

COMEON KOMATSU

超絶細密木版画の世界

Portfolio

No.1 欅II
No.2 おはよう

No.3 神代欅

No.5 バナスパティ / Bnas pati

No.9 木霊 / Tumpek uduh

No.13 ドゥルガーの門 / Gate of Durga

No.16 テガラランの霊樹 / Taksu di Tegallalang

No.17 森の夕暮れ

No.20 諏訪大社前宮 子安神社

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小松嘉門の芸術的遍歴は、逆境を乗り越え、超越を体現し、自然界と形而上の世界との揺るぎない対話を続ける旅である。

ヴァネサ・マルティダ


『BALA ASWATTHA』において、小松は29点におよぶ精緻な木版画を発表した。そこには、バニヤン(アシュワッタ)の木が物理的な存在として、そして目に見えぬ力(バラ)の象徴として探究されている。ヒンドゥーやバリの宇宙観において、バニヤンは単なる植物以上の存在であり、聖性を宿す器、祖霊の住処、そして生のリズムを静かに見守る証人である。『スンダリガマ』や『ウサダ・タル・プラマナ』といった古代のロンタル文献もまた、この木を宇宙の柱として敬い、その雄大な姿を知恵、忍耐、瞑想、癒しの源泉として讃えてきた。

しかし、この文脈における「バラ」とは、樹そのものの強靭さに限られるものではない。それはその存在を貫くエネルギーであり、木陰に身を寄せる見えざる力、葉を揺らす祖先のささやき、その広大な抱擁の中に安らぎを見出す精霊や生きものたちの気配でもある。同様に、小松の作品は単に樹を描くだけではない。目に見えぬものの共鳴を宿し、観る者を「見る」という行為と同じくらい「感じる」体験へと誘うのである。繊細な木版の刻線によって構成された作品は、バニヤンの迷宮のような構造を思わせ、人間の思考の神経回路を映し出すかのような根と枝の網目を描き出す。そこには、つながりと意識への瞑想が刻まれている。

日本に生まれ、画家の家系に育った小松にとって、創造の資質は疑いようのないものであった。しかし運命は予期せぬ形で介入する。大きな事故によって片手しか使えなくなったのである。この制約を強いられた瞬間、彼は自宅近くで一本の古木に出会う。切り落とされた枝からなお新芽を芽吹かせるその木は、静かでありながら屈しない力を放っていた。その姿は単なるイメージではなく、啓示であった。この出会いが彼を木版画へと導く。厳格でありながら瞑想的でもあるこの表現手法において、一つひとつの刻みは、樹そのものの忍耐と魂を響かせるものとなった。

木版画は、江戸時代(17世紀〜19世紀)の日本に起源をもつ尊敬される技法であり、木と墨と紙を意味の器へと変容させることで、物質を超越する表現として長く継承されてきた。小松の実践は、伝統への敬意であると同時に新たな再解釈でもある。木にかたちを押し付けるのではなく、木目の流れに耳を傾け、それを導き手とすることで、作品に有機的な生命力を吹き込むのだ。1990年代から滞在を重ねてきたバリは、彼の表現に消えない痕跡を残し、日本の芸術的伝統とバリの精神的景観とをつなぐ橋を築いてきた。

小松の版画は、単なる紙への印象ではなく、瞑想的な行為そのものである。一刀ごとに見えざる存在との対話が刻まれ、一刻ごとに木に宿る霊性が呼び出される。小松嘉門は私たちを招き入れる――バニヤンの神聖な存在だけでなく、それが人間の魂の中に響く共鳴そのものを熟考する場へと。

ヴァネサ・マルティダ

八ヶ岳とバリ島を行き来しながら創作活動を行なっています。

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